カンクン合意と2℃目標

 2010年にメキシコのカンクンで開催されたCOP16では、COP15で留意にとどまったコペンハーゲン合意に記載された2℃目標をCOPでの正式な決定として確認し、京都議定書に参加していないアメリカ、さらに京都議定書では削減目標を負っていない途上国も含めてすべての国が自主的に削減・抑制目標を設定し、その履行を政治的に約束することになりました。このカンクン合意により、各締約国が2020年目標を提出しています(表3)。しかし、現在提出されている目標は、平均気温の上昇を2℃未満に抑制するには極めて不十分です。
表3 カンクン合意の下での主要国の目標(2020年)
排出量のシェア(2010年)削減目標*1基準年備考
中国24.0%▲40~45%2005年GDP当たり
アメリカ17.7%▲17%2005年
EU9.8%▲20%/▲30%1990年
旧15ヵ国27ヵ国
ロシア5.2%▲15~25%1990年
インド5.4%▲20~25%2005年GDP当たり
日本3.8%▲3.8%2005年1990年比では+3.1%
韓国1.9%▲30%BaU*2
カナダ1.8%▲17%2005年
オーストラリア1.3%▲5~15%/25%2000年
ブラジル1.3%▲36.1~38.9%BaU比
南アフリカ1.1%▲34%BaU比
*1 前提条件により幅のある目標を提出している国がある。
*2 BaU(Business as Usual)とは、「現在までに導入されている対策の効果を想定し、追加的な対策が講じられず現状の対策レベルで推移する」と仮定した場合の将来予測を指す。「現状推移ケース」という場合もある。
出所:排出量のシェア(2010年)はIEA「CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION HIGHLIGHTS」2012 EDITIONよりCASA作成、各国の目標はUNFCCCウェブサイトより。
89図1
図1 2030年までのGHG排出経路
出所:IPCC第5次評価報告書第3作業部会報告、
政策決定者向け要約よりCASA作成
 AR5によれば、2℃未満に抑制する可能性が少なくとも半分程度(33~66%)となる水準は、2100年の温室効果ガス(GHG)濃度は約450ppmか約500ppmで、そのためには2030年における年間GHG排出量はおよそ30~50Gt*4(300~500億t)としています。図1は、AR5の第3作業部会報告(WG3)に掲載されているもので、2030年までのGHG排出シナリオ経路を示したものです。下の色の濃い部分が2030年のGHG排出量が50Gt未満のシナリオ経路で、真ん中の少し濃い部分が50~55Gt、上の薄い部分が2030年に55Gtを超えるシナリオ経路です。図1の真ん中に描かれた太い縦線は、カンクン合意に基づく2020年の削減目標の範囲です。つまりカンクン合意に基づく2020年の削減目標はもっとも削減できた場合でも50Gtを超えており、2℃未満に至る排出経路からは外れています。AR5は、このままいくとカンクン合意の排出量は、3℃未満に抑える可能性が高い(66%以上の確率)シナリオ経路におおむね一致するとしています。
 AR5は、2020年までの努力に加えて2020年以降にさらなる大幅な削減ができた場合には、2℃未満目標達成の可能性も残されているとしていますが、緩和の努力が2030年まで遅れて、2030年に55Gtを超える排出になった場合には、削減に向けた選択肢が減り、2℃未満の達成は難しくなるとしています。
 つまり2℃未満を達成するためには、世界の年間GHG排出量を2030年に50Gt未満にしなければならず、そのために「2015年合意」が決定的に重要なのです。

*4 本稿で記述しているGt(ギガトン)の数値は、すべて二酸化炭素換算(CO2e)の数値。
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