COP3までの京都議定書交渉

気候変動枠組条約は、発効条件となっていた50ヵ国の批准を経て、1994年3月に発効し、その1年後の1995年3月から4月にかけて、ドイツのベルリンで第1回締約国会議(COP1)が開催されました。

このCOP1が開催された頃には、気候変動枠組条約では気候変動問題の解決には不十分で、先進国に追加的な削減義務を課す議定書が必要だとの認識が高まっていました。

EUは、先進国にさらなる削減目標が必要で、COP1で議定書交渉開始に向けた決議をすべきと主張しました。アメリカや日本などのEU以外の先進国は、議定書交渉を開始すること自体に消極的でした。多くの途上国は先進国のみが削減義務を負うべきで、途上国には削減義務などを負わせるべきではないと主張しましたが、先進国の削減義務に反発する産油国が対立していました。膠着状態に陥った会議を動かしたのは、インドを中心とする「グリーングループ」が結成され、附属書Ⅰ国の排出抑制義務や非附属書Ⅰ国への資金・技術移転などとともに、非附属書Ⅰ国には義務を課さないという内容の「グリーンペーパー」をまとめ、先進国に提示しました。これを契機に会議が大きく動き、で、現在の条約では気候変動問題の解決には不十分であることを確認し、COP3までに「新たな議定書あるいはこれに代わる法的文書」に合意するとするベルリン・マンデートが決議されました。このCOP1で議長を勤めたのは、現在のドイツのメルケル首相で、最後はアメリカの代表を膝詰めで説得したと言われています。

ベルリン・マンデートが、COP3までに CO2排出量の抑制・削減目標と達成期限を決める議定書またはその他の法的文書を採択するとしたことにより、COP3は気候変動問題の解決にとって決定的に重要な会議になりました。そして、このCOP3の議長国として、日本政府が名乗りをあげたのです。日本政府がCOP3の議長国として名乗りをあげたことには、私たち日本のNGOは驚くとともに、困惑しました。驚いた理由は、日本政府が温室効果ガスの排出量の削減の合意という極めて難しい国際交渉の議長国として、リーダーシップを発揮できるとはとうてい思えなかったからです。COP1の議長国であったドイツ政府は、COP1の議長国を引き受けるにあたって、国内での CO2排出量の大幅な削減目標と達成期限を設定し、自らが率先して削減する態度を明確にして、議定書交渉をリードしてきました。しかし、日本政府にはまったくこうした準備はなく、削減どころか、1990年に閣議決定した「地球温暖化防止行動計画」が定める、 CO2排出量を2000年までに1990年レベルに安定化することすら達成できる見通しがなかったからです。

ベルリン・マンデートにもとづき、特別作業グループが設けられ、「新たな議定書あるいはこれに代わる法的文書」の交渉が開始されました。この特別作業グループは、「ベルリン・マンデート・アドホック会合(AGBM)」です。このAGBMの最大の論点が、2000年以降の先進国の目標数値でした。また、目標数値もさることながら、対象ガスをどうするか、目標年、森林などの吸収源の扱いなども交渉のテーマでした。

差異化
さらに大きな問題は、先進国の各国の国別目標をどのように決めるか(差異化)でした。ノルウェーなどはGDP当たりの排出量や一人当たり排出量を基準にすべきだと主張し、オーストラリアはGDP成長率、人口の推移、化石燃料の輸出入量などをもとに定めるべきだと主張し、スイスやフランスは一人当たり排出量を基準とする案を提示していました。

削減数値
削減数値については、EUは2010年までに一律15%削減を主張しましたが、EU内部では90年比で25%削減するドイツやデンマークや、40%の増加を認められたポルトガルまで大きな差異があり、これが一律ではなく国別に差異化した目標数値を主張する日本やノルウェーに批判されることになります。しかし、EU以外の国は具体的な目標数値を提案できないままでした。日本が国別の差異化を主張する根拠は、オイルショック後に日本は省エネを進め、他の先進国に比べて一人当たり排出量が少なく、こうした既存の努力が評価されるべきだというものでした。日本は、当時、1990年比で排出量を削減するのは困難とする通産省と、6%程度の削減は可能とする環境庁が対立しており、具体的な目標数値を提案できる状況ではありませんでした。COP3直前の1997年10月のAGBM8で、「基準削減率は5%とし、但しGDP当たり排出量あるいは一人当たり排出量が附属書Ⅰ先進国の平均より低い場合、また人口増加率が平均を上回る場合は、その分だけ削減率を下げられる」とする案を主張しました。これはオイルショック後に省エネを進め、他の先進国に比べて一人当たり排出量が少ない日本は削減率が低くなる、日本に都合のよい案でした。

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